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「大切な日だろう。お前が生まれた日だ」
「・・・・・・そうなのかな」
「だから、智子さんだってその日を大切にしてくれてるんだろう」
沖村はすっかり母さんと仲良くなったらしい。俺がしょっちゅう家に連れていくようになったこともあって、話は合うらしい。
それもあって、沖村んちにはあまりいかなくなった。それこそ、二人きりになりたいとか、そういう時じゃないと。
沖村は最近父親と険悪らしい。父親がずっと望んでいた大学とは別の大学にいくことに沖村が決めたからだった。
それで相当な大喧嘩をして、自分は父親のいいなりにならないと啖呵を切ったのだという。沖村のそんな姿、全く想像がつかない。ちょっと見てみたかったと思う。
だから、最近は余計にうちに来ることが多いのだ。
それまでも仕事で家にいないことが多い両親だったが、これまで以上に家のことに無関心で、帰ってこなくなったと逆に清々しい表情で言われたときは、どう返したらいいのかわからなかった。
でも、俺が言えたのは、俺はそばにいるから、って言葉だけ。沖村みたいにかっこいい言葉は出てこなかった。
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