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「明日は、お前が祝ってくれんの」
「ああ」
「ふぅん」
沖村は、卒業したら一人暮らしをするのだといっていた。家を出たいんだと。だから、沖村も進路が決まってからはバイトを始めた。
母親の方とはまだうまくいっているようで、生活費など援助してくれると父親に内緒で約束しいてくれているらしい。沖村はあまり頼りたくはないとはいっていたが、大学に行きながら生活費を稼ぐのは大変だとわかっているからか、文句をいいながらも受け入れるつもりでいる。
そういう一連の話を、隠すことなく俺に話してくれた。それが嬉しかった。頼られてるみたいで。
「楽しみだな」
「ふ、そうか」
「なんだよ」
「お前もずいぶん素直になったなと思って」
昔を思い返しているのか懐かしむような顔をしていた。まぁ最初の頃は荒ぶってたというか、めちゃくちゃ反抗してた気はする。今はもう反抗する意味はないし。自分の状況も落ち着いてしまっているから気持ち的にも余裕があんのかもな。
そう考えると、今の両親には感謝だ。そしてもちろん、沖村にも。
「じゃあ、家族との誕生パーティ楽しんで来いよ」
「大袈裟だな。ああ。じゃあな」
沖村が使う駅まで俺が送る。それが日課だった。沖村は俺んちまで送るといつも言うが、沖村んちの方がここから遠い。だからそう言って強引に俺が送る側になった。
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