1126人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいまー」
マンションに帰り、玄関を開くと中からごそごそと人が動く気配。
「ハッピーバースデー!」
パンパン! と弾ける音と煙の臭い。そして舞う紙吹雪。呆気にとられた向こう側で、二人が楽しそうに笑いながらクラッカーを手にしていた。
「び、っくりした」
「お帰り! さ、入って。鞄おいて手を洗ってリビングに来てね!」
撒き散った紙吹雪もそのままに引っ張られるようにしてなかに入る。言われるがまま鞄をおいて軽く着替えて手を洗うとリビングに向かった。
なんか、突然すぎて呆気にとられてしまう。クラッカーとか初めてだ。
「琥太郎くん、誕生日おめでとう!」
リビングに入ると、改まったように二人がそう言って迎えてくれる。テーブルの上には豪華な料理と真ん中にはホールのケーキ。蝋燭が立てられたイチゴのケーキだ。
見たことのない光景。こんな風に誕生日を祝ってもらうのなんて初めてだった。
祝ってくれるって聞いてはいたけど、こんなのは想像してなかった。祝ってくれるだけで十分だって思ってたし。こんなの、今まで誰もしてくれなかった。
最初のコメントを投稿しよう!