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大人でも子ども、子どもでも大人
「鍵を閉めたままで夜中の四時三分になったら、鍵を開けて閉めて開けて閉めて開けて閉めて開ける。それで玄関をがちゃっとやったら、はい! そこは黄泉の国」
そう得意気に語っていたタクローは、行方不明になってから八年経ってなぜか分からないけれど私の家の前に現れた。行方不明になってから七年経った時にタクローの家族はタクローの失踪宣告をしてそのまま引っ越してしまったから、仕方なく私の家に来たのかな? とは考えてみたものの、生前……っていうか今も目の前で生きているんだけど、まあそれはどうでもよくて。タクローは特別仲が良かったって事もないのになんで私の家に来たのかなと悩んでいたら、タクローが答えを教えてくれた。
「なんか分かんないけど、俺ん家ないやって思ったら、ぱっと頭に浮かんできたのが桜だった。で、知らない内に桜の家の前に立ってたからピンポン押したってわけ。そんだけ」
最後のそんだけが、どんだけなのかは理解出来ないけれどなるほど。タクローは私の事が好きなんだろう。今年で二十一歳になるんだから、それくらいは私だって想像出来る。でも二十一歳になろうとしている私だって、タクローが行方不明になった時と同じ十二歳? 十三歳? か、どっちかの姿のままでいる理由は分からない。分かるわけない。神隠し。そんな安易な発想が頭に浮かぶし、それは実際にあるんじゃないのかなっていう考えで頭の中はいっぱいに満ちていく。でも少しだけ神隠し以外にも頭のスペースは残っていて、それがもう一つの疑問。なんでタクローは二十一歳を目前に控えた私を私だって認識出来たんだろう?
「なんでタクローは、私を桜だと思うの?」
タクローは目をぱちぱち。右足くねくね。別にタクローは学年一のイケメンではなかったけど、改めて見ると目はぱっちり二重で、足はすらっと長いし悪くない。色は浅黒くて運動とかしてそうな爽やかさがある。
「耳とか口とか、桜のパーツって感じのは、そのまま桜のパーツって感じで、残ってるじゃん」そして目を逸らす。
「まあ、なんていうか、おっぱいは、デカくなってるけどさ」
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