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昔話のママハハというものは意地悪と相場が決まっている。
私の継母は、意地悪じゃなかった。料理は食べれないほど下手じゃないけど上手ってわけでもないし、片づけはするけど掃除は得意じゃないみたいで床掃除した後に電灯の埃をとって床を汚したりするし、何もかも完璧な素晴らしい母親とはいかなかった。
でも、そもそも完璧な人なんていない。学校やバイト先や近所付合い、親戚付き合いでダメな大人もいくらか見てきた。継母は、美紀子さんは、けしてダメな大人ではなかった。
ダメな大人であってほしかったのかもしれない。そうすれば人並みだったママが、美紀子さんよりも優れた素晴らしい母親だったってことになるから。
ママだって完璧な母親じゃなかったけれど、美紀子さんよりはできることが多かったし、優しかったように思う。でも私の中の理性的で冷静な部分が、それって思い出補正なんじゃないのって言い出して、私は自信が無くなってくる。
ママを知っている人に美紀子さんとの違いについてそれとなく話を振ってみても、人によって感想は違っているし、なにより私に気を使ってるなっていうのが分かる。
どちらが優れているかなんて問題じゃないって趣旨のことを言われることもあるし、私も心の半分ではそう思っているけれど、残りの半分はママのほうが良かったことを証明したいって思ってる。心の半分では仲良くしたいと思いながら、残りの半分は絶対に好きになんてなれない敵だって思ってる。
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