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「……でもそれって不公平じゃない?」 ようやく出てきた私の言葉に美紀子さんの顔がこわばった。穏やかな表情を、声を、必死に作っていることは分かっていたけれど、私のたった一言で、必死に作った顔は端っこから少しだけ崩れてしまった。それを見て、私は美紀子さんの強い緊張を知った。 私の言葉はたった一言で、まだ要領を得ない。吐きだした私ですら何を言いたいのかまとまっていないくらいなのに、美紀子さんにとってはここから何を言われるか、不安でたまらないだろう。私の言葉を待つ美紀子さんの表情がこれ以上崩れてしまう前に、私は頑張って口を開いた。 「無理に愛さなくていいのは、わかるし、そうだと思う。でも新しい親が新しい子供を愛するのは義務っぽいよね。愛せないなら結婚するなみたいな、雰囲気あるじゃん」 雰囲気って言い回しにしたけど、これは私の考える常識で正義だ。でもそれを正義だと言い切るのも気が引けて、そういう風潮もあるよね、ってぼかした。 私は美紀子さんに比べると表面はとても余裕面で、でも内心とても狼狽していた。それでも、私が、美紀子さんが、傷つくかもしれない言葉を避けようと思うくらいの余裕は残っていた。 「子供は親を愛さなくていいのに、子供に嫌われてても親は愛さないといけないって、なんか、一方通行なのは、不公平じゃないの」 言いながら考えながら、まとまらない気持ちをまとめていく。終着点が本当に自分の思う事かどうかも分からないけれど、とりあえず言葉にした。 美紀子さんは私が言い終わってから、しばらく無言だった。たぶん互いに自分の思うことをまとめながら、相手が何を思ってるのかなってたくさん考えている。
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