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路地裏へと足を踏み込むと、顔はシワシワで猿みたいだが、人の良さそうな目と合った。
あれ、オレこんな人知らないぞ。
「ばあちゃん、オレあんたとどっかで会ったっけ?」
こりゃうまいことひっかけられたな。してやられた感がつい顔に出てしまったセシルを、老婆はこれまた心外というような顔で見返した。
「覚えとらんのはお前さんの方だよ。…まあ無理もない、最後にまともに会話ができたのはだいぶ昔のことだからねぇ」
「え、昔っていつぐらい?」
「はるか昔過ぎて、わしも覚え取らん」
「はあ?はるか昔って…」
オレ16年しか生きていないから、この90も100も生きてそうな老婆が言う遥か昔には生きていないと思うのだが。このババア誰かと勘違いしてる…というか、ぼけてるんじゃ。
「まあ、覚えておる方が問題なんじゃが。とにかく、お前さん、手を出してくれんかの?」
「は?」
セシルは全く話についていけず、首をかしげる。しかし、老婆は構わず、にこにこと続ける。
「ちょっと視てやりたいと思ってな…」
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