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その上、麻薬事件とマンジュリカの関わりについてやはり気づいていたかと言う団長に、正直に「兄の書類を盗み見しました。ちなみに自己防衛を呼びかけるためにカイゼル達にもばらしました」と言えば、盛大にため息をつかれて殴られたので物理的にも頭が痛い。
「はあ……オレもうやだこの人生」
手すりに額をゴンとぶつける。すると、服の下に掛けていたネックレスの鎖がこすれて、しゃらんとかすかな音を立てた。平々凡々に市井で生きていくはずだったオレが、どこの馬の骨ともわからん女に利用されて人生目茶苦茶にされて―いや、元々の人生すら仕組まれたもので―やっと解放されたと思ったらまたその女に頭を悩まされている。
何かやらかした罰が一気に当たったのではないかとセシルはふと思うが、首をふるう。だって、そうなら産まれた時から罰を当てられていたことになる。
無垢な赤子どころか生まれる前のオレが、いつ誰に何かをとやかくできるはずもない。いや、もしかして前世の業とかっていう奴か?はあ…そーならオレは前世ではきっと極悪人だったに違いない。今世は善人にならなければ来世が危ぶまれるという不安にセシルはかられる。
―いや、もう遅いか
セシルは顔をあげため息をつく。
―だって、結局この人生でも色々やらかしたから
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