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実は半分も状況を理解していないが。
ええと、あれだろ。サアラがオレにお弁当を作ってくれたってことだろ?武闘会だから、そうオレに…って、ハイ?!
驚いた顔で見上げると、サアラは余計な反論は許さないとでも言うように、セシルを見下し睨みつけていた。
「何か文句でも」
「…いや…ないです」
目の前には目を白黒させて、私の顔と差し出されたものを何度も見比べる主人がいる。まるで、空から岩が降ってきたのを見たかのようなお顔ですね。
「なんか、いいことでもあったのか?」
セシルはびくびくとしながら立ち上がりつつ聞く。
「別に」
―嫌な事ならありましたが。
「じゃあなんで」
「それはセシル様に全力を出して頑張っていただくためです、頑張ってください?」
精一杯努力してにっこりと笑いかけたつもりだった。しかし、当の本人はどどどどーっと全力で壁まで後ずさりし、ぞぞぞーっと寒気に胸を抱いて震えはじめた。なんて失礼な。
「お前よもや毒でも仕込んで…」
泣きそうになってがたがた震える様子の主人。下穿きはきかけでしたから、上を着ただけの下着一丁ですね、情けない。思わずくすりと笑ってしまうが、そのしぐさにまでおびえることは無いんじゃない?
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