第1話 眠り薬

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第1話 眠り薬

   あの人に恋をした。  物心ついた時から、いつも一緒にいてくれたあの人に。  自分に向けられる笑顔に。  頭を撫でる大きな手に。  どれほど心を揺さぶられ、掻き乱されたか分からない。  少しでも憂い顔をすれば、何かあったのかと、心を配ってくれる彼に。  粗野な物言いながらも話を聞いてくれる、彼の存在に。  気付けば恋をしていた。  とても好きだった。  だがそんな淡い春は、十八の歳になって見事に霧散する。  ──彼には既に、想い人がいたのだ。    
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