そして彼らは、名探偵になった。

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そして彼らは、名探偵になった。

二月十四日、八時二分前。 俺は下駄箱の前に立ち尽くしていた。 朝からひどいものを見てしまった。 一つ目は、マンションを出たところで。 バレンタインだとかいう、外国の行事の今日。いつもはラブラブなカップルが目に着くが、今年は違った。 今日はやけに静かだと思ったら、人っ子一人いなかった。 何気なく近所の公園を見てみると、何かが地面にはいつくばっていた。 犬か何かだと思っていたら、声が聞こえてくる。 「・・・を。・・・iを。」 今まで聞いたことがないほどの低くしゃがれた声。 よく見てみると・・・ 「うわぁっ・・・!」 叫んでしまった。 (人間・・・) 確かにそれは、人間だった。 でも、人間ではなかった。 裾が引き裂かれたような服、痩せて青白くなった頬、振り乱れた髪。 そして・・・鋭い牙の生えた口。 口の中は血まみれで、まるで飢えた吸血鬼でも見ているかのようだった。 それは、ゆっくりと俺の方を見た。 「血を、血を・・・くれぇ・・・・・・」 静かだが、鋭い目をしていた。 ゆっくりと後ずさりをする。 もしかしたら、本当に血を吸われるかもしれない。 近づいてくるそいつを、見えないふりをして引き離した。 学校に着いた。     
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