未来《さき》詠みの少女

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王子は自分の父である王を殺害して新王となり、王以外の者は決して入れる事が出来なかった「王の宝物殿」に入る事ができた。 そこで前王が最も大切にしていた「未来(さき)詠みの少女」を初めて目にした。 「未来(さき)詠みの少女」は大きな鳥かごに入れられて逃げ出さないように足枷をつけられていた。金色の細い髪を腰まで長く伸ばし、か細く長い手足は透き通るように白く、背中に長い金色の羽があり、大きな瞳は綺麗な緑色だった。 その瞳で見つめられ、王子は一目でその少女に恋をした。 「前王はいなくなった。私が新しい王だ。さぁ前王にしていたように私の未来(さき)詠みをしてくれ」 王子は言った。 少女は高く美しい声で 「未来(さき)詠みは私が信頼した人にしかできません」と答えた。 王子は、どうすれば信頼してくれるのかを訪ねたが少女は、ただ首を振るばかりだった。 まず王子は宮殿に、少女のために立派な部屋を作り、そこへ少女を籠ごと移し、この世にある宝という宝や最高級の食べ物を与えたが、少女はまだ口を聞いてくれなかった。 「これだけの贅を与えているのに、なぜ未来(さき)詠みをしない!」 王子はだんだんと苛立ってきた。 王子が何年も少女に夢中になっている間に国はだんだんと滅んできた。 国の重臣の間では王子暗殺の話しまで出てきてしまった。 王子は誰も信用できなくなり一日中少女の部屋に籠もるようになった。 何年経っても変わらぬ少女の前で王子はだんだんと朽ちていった。 王子は少女の足枷を取り、籠から出し、 「もう疲れてしまった。しかし、今では憎いとさえ思うお前を殺すこともできない」と言って少女の体を抱きしめた。 とうとう少女は口をきいた。 「西の塔」 「西の塔に何があるのだ」 「あなたの…未来(さき)が…」 王子は朽ちていく体を引きずりながら西の塔に向かった。 そこで王子は待ち構えていた家臣に暗殺されてしまった。 王子は命が尽きる前に少女の姿を見た気がした。 愛する少女を前にして王子は静かに目を閉じた。 「あなたの未来(さき)は詠みたくなかった」 少女はそう呟いて大きな美しい金色の羽を広げ空へ飛んでいった。
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