2/3
前へ
/8ページ
次へ
俺の名前は蟻吏手霧鳥(ありりて むどり)。 いつも薄っぺらい財布を見て、沈んだ気持ちになる。 昔は生活に困るようなこともなく、貯金もしていた。 別に、金が全てではないと思っている。けれど…… 家の中でゲームばかりしていつの間にか家出した兄さんと違い、俺は有名な大学の法律学科を出て、いい会社にも入った。 それがどうだろう。 2ヶ月前に突然会社が倒産したと告げられたときから今日まで、俺は地べたを這いつくばっている。 スーパーのアルバイトと倒産した際に出た退職金で、何とか凌いでいる今の生活。 何とも理不尽ではないか。 俺はもう何日も敷きっぱなしの布団に重なり、明日を憎み、夢の中にいつまでも居たい衝動に駆られながら眠った。 (まぶた)が閉じていく中、誰かが俺の前に立っていた気がした……
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加