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起きたとき、俺は見知らぬ部屋にいた。
いつの間にか椅子に座っていて、目線の先には机がある。
ふと目をやると、机の反対側には俺より少し年配の中年男が、こちらを見ながら愛想笑いをしていた。
俺は咄嗟に口を開く。
「いったい、ここはどこなんだ!?」
「……実はあなたの先祖の埋蔵金が発見されましたので、つきましては、血筋が一番近かった霧鳥さんに貰ってほしい所存です」
少し間を置いてから男はすらすらと答えた。
「いや、えっとここは……」
俺は男の圧に押され、小声で繰り返し質問する。
「ここは、少し異空間な部屋です。そして私は、あなた、霧鳥さんにお金をお渡しに参りました、ワドール・ラパレルと申します」
ワドール・ラパレル……いかにも日本人って感じの顔しているんだけど、まぁそれはいいとしよう。
「ま、埋蔵金なんて、俺は全然知らないんだけど」
「自覚していなくても致し方ありません。つい最近見つかったのですから」
「そうですか……それであの~お金はどこに」
俺は訳もわからん得体の知れない所にいるのに、頭はお金でいっぱいだった。
しかしラパレルは俺の反応に訝しむことなく、どこからともなく札束を取り出し、次々と机に並べていく。
「合計金額2019万円分になります」
ラパレルは並び終えると、手で額を拭った。
「凄すぎる……」
俺が目の前の札束に驚愕していると、不意に、ラパレルが横から忠告してきた。
「霧鳥さん、喜ぶのは良いのですが、しっかりと意義のあることに使ってくださいね」
「はい」
目を札束に向けたまま、何気なく答えた。
「では、このカバンの中にお金をどうぞ」
ラパレルは俺にカバンを受け取らせると、せっせと歩き、部屋のドアを開けた。
「さぁ、こちらから」
俺は札束を詰めこみ、ドアへと向かった。
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