4人が本棚に入れています
本棚に追加
「━━はっ」
俺はいつの間にか布団から起き上がっていた。
頭が重い。あれは何だったのだろう。
「よぉー、元気にしてたか、霧鳥?」
俺の隣から声が聞こえてきた。
「えっ、に、兄さん……? あれ、俺は商店街にいたはずじゃ」
家出してから10年以上経っていたものの、ちゃんと覚えている。
あの廃人兄さん。
「どうして兄さんが……」
「お前にちょっと実験してもらったのさ」
「実験?」
ようやく気付くことが出来た。頭の上に何やら電子機器のヘルメットが装着されている。
「これはいったい」
「仮想世界を体験するゲームさ。着けている間、ずっとゲームを楽しめる。プレイヤーが終わりにしたいと思ったらログアウトする仕組みだ。その様子だとうまくゲームに騙された、って具合だな」
兄さんは自信たっぷりに答えた。あの人の気配は兄さんだったのか。どこに隠れていたのやら。
それにしても……
「仮想ってことはさっきのは夢でも現実でもなくて、ゲームだったのか。なーんだ」
俺は呆れてしまった。ゲームか、そうかゲームだよなゲーム、まっ、そうだよな~。
「じゃあ、兄さんはゲーム開発をしてるってこと?」
「そうなるな。ゲーム内は実にリアルかつ完璧だっただろ。これで遂に俺のゲームも認められるだろう。長かった長かった」
兄さんは頷きながら言った。
そうだったのか……兄さんはちゃんといい職業に就いていたのか。
でも、完璧じゃないぜ、兄さん。
最初のコメントを投稿しよう!