真実

2/2
前へ
/8ページ
次へ
「━━はっ」 俺はいつの間にか布団から起き上がっていた。 頭が重い。あれは何だったのだろう。 「よぉー、元気にしてたか、霧鳥?」 俺の隣から声が聞こえてきた。 「えっ、に、兄さん……? あれ、俺は商店街にいたはずじゃ」 家出してから10年以上経っていたものの、ちゃんと覚えている。 あの廃人兄さん。 「どうして兄さんが……」 「お前にちょっと実験してもらったのさ」 「実験?」 ようやく気付くことが出来た。頭の上に何やら電子機器のヘルメットが装着されている。 「これはいったい」 「仮想世界を体験するゲームさ。着けている間、ずっとゲームを楽しめる。プレイヤーが終わりにしたいと思ったらログアウトする仕組みだ。その様子だとうまくゲームに騙された、って具合だな」 兄さんは自信たっぷりに答えた。あの人の気配は兄さんだったのか。どこに隠れていたのやら。 それにしても…… 「仮想ってことはさっきのは夢でも現実でもなくて、ゲームだったのか。なーんだ」 俺は呆れてしまった。ゲームか、そうかゲームだよなゲーム、まっ、そうだよな~。 「じゃあ、兄さんはゲーム開発をしてるってこと?」 「そうなるな。ゲーム内は実にリアルかつ完璧だっただろ。これで遂に俺のゲームも認められるだろう。長かった長かった」 兄さんは頷きながら言った。 そうだったのか……兄さんはちゃんといい職業に就いていたのか。 でも、完璧じゃないぜ、兄さん。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加