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「ちょ、内村! やめて、何事っ!」
「間違えたのっ! 学校で目立たないようにって同じ袋に入れちゃったから、うっかり取り違えちゃったの!」
テンパりまくった内村の話を総合すると、どうやらあの【クマヘルス】は内村の親父さんのものらしい。内村が頼まれて買ってきたそうだ。たまたま同じくらいの大きさの箱を同じ紙袋に入れたせいで、逆に渡してしまった、と。ちなみに今は俺に渡してしまったために足りなくなった【クマヘルス】を買いに来ていたのだとか。
てことは、待てよ?
俺に渡そうと思ったのは【クマヘルス】じゃなくて――――
急に心臓がバクバク音を立て始めた。今度は勘違いじゃないよな?これでまた変な健康食品渡されたら俺、叫びながら泣きながら大通りをどこまでも走っていっちゃうよ? そのまま海に飛び込んで太平洋泳いでハワイまで行っちゃうかも知れないよ? ちなみにハワイに意味はない。
「じゃあ、別に俺が隣の席で臭いわけじゃなくて」
「そんなわけないでしょ! 本当に渡すもの間違えただけ」
「----何を渡してくれるつもりだったの?」
「えっ、あの……うん、今は持ってないから明日渡すよ」
明日までお預けですかそうですか。
でもいいよ、期待通りのブツがもらえるなら。
いつまででも待つよ。
もちろん早いほうが嬉しいけど--そうだ。
「そしたら、もう暗いから内村んちまで送っていくよ。そしたら--今日、もらえる?」
君を。じゃない、君の贈り物を。
内村は頬を赤く染めながら嬉しそうに頷いた。
それから二人でゆっくり夜の道をたわいもない話をしながら歩いた。
本当は手を繋ぎたかったけど、それはちゃんと待たなきゃね。それこそまた俺の勘違いだったら地面をブラジルまで掘り進める気がするよ!
「でも、焦ったよー。お父さんが堂島くんに渡すつもりだった袋を私に返してくれて、"これ本命チョコだろ?" って指摘された時は!」
「え?」
「え?」
しばしの沈黙の後。
「う、うわああああああああああっ!!」
「内村! 待てよ! おーい!!!」
内村は顔を真っ赤にして走って逃げてしまった。
慌てて追いかけたけど、彼女の家を知らなかった俺は途中で彼女を見失い、結局ピンクの紙袋に入った内村の「本命チョコ」(手紙入り)を受け取れたのは翌日になった。
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