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などということはあるわけがない、と頭から必死に妄想を駆逐しつつ、改めてパッケージを観察する。
ほうほう、主成分とか見ると全然チョコっ気はないな、ひゃっほうちくしょう。期待させやがって。
んで、熊笹からの抽出成分が主役のドリンク剤なわけね。だから「クマ」ってつくんだな。いかにもパワフルなイメージだが、さて効能は――――
そこまで読んで俺は固まった。いくつか書いてある効能の中で、最も強く主張しているのは――――
【口臭、体臭の除去】
マジか?
俺は高校で野球部に所属している。朝早くから朝練やって、夕方も遅くまで部活。有り体に言えば一日中汗だくだ。更に、弁当も2つ持ってきてがっつり食ってる。
俺、自分じゃわからないけど、臭うのか?
内村はクラスで俺の隣の机だ。気が付かない間に嫌な思いをさせていたのかもしれない。それで、体臭に効果のあるこれをこっそりくれたのか。
いやでも、バレンタインにこれって! キッツいなあ! そんなに嫌なら言ってくれれば!
――――そうじゃない。言うに言えなかったんだろう。悪いことをした。むしろ、そうやって気づかせてくれたことに感謝するべきか。嫌いな奴にも優しい彼女に惚れ直しそうだ。
いや、まてよ。
嫌いなら無視するんじゃないか? わざわざこうやって指摘してくれるってことは、逆に俺を見ているってことで。期待していいんだろうか。
でも、嫌いだから「寄るな触るな」って言いたいんだったらどうしよう!
短い間に浮沈を繰り返し、どうしようもなくなった俺は夜の街にくりだした。
デオドラント剤とグリーンガムを買いに。
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