第一章 終わりの始まり

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先週の水曜日 世界が終わりを迎えた。 いや、正確に言うと世界が終わることが分かった。 世界が終わることに比べたらこんな些細なことにツッコむ人はいないだろう。 最初、この終末のニュースは夕方に全チャンネルで緊急放送として、くそつまらない国会答弁と変わらない調子で総理大臣から伝えられた。 そのあとはテレビではどのチャンネルを回してもこのニュースがセンセーショナルに報道された。 Twitterや友達のLINEグループ、ネットの掲示板もこの話題で持ちきりだった。 なんだかんだ盛り上がってても突然世界が終わりますなんて知らされても実感なんて1 ミリも湧かないし、だからといってどうすればいいのか分からないので、これといって映画やドラマのようなパニックや暴動も起きなかった。半数の人は次の日にはいつも通り学校や会社に行ったらしい。 テレビではどこかの国の有名な研究者がこの出来事について説明している映像が日本語の字幕付きで延々と放送されていた。 世界が終わる理由は、物理学かなんかの研究でこの僕たちが生きている世界がシミュレーションされたもの、つまりゲームみたいなものであることが分かったらしい。 この世界をシミュレートしてる奴がこの世界に飽きたのか知らないけど、ゲーム終了のタイマーがセットしてあるらしい。 この世界がシャットダウンされるまで残された時間は僕らの世界での10日に相当し、次の週の金曜日にさよならというわけだ。 文字通り週末に終末を迎えるという皮肉のような笑えないジョークだ。 僕たちにとっての神に相当する存在は実在していた。 そして、その神々は僕たち人類を寵愛し庇護してくれるようなおとぎ話の中の存在とは違い、僕らのことを実験動物、あるいはそれ以下のペット育成ゲームくらいにしか考えていないのかもしれない。
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