第3章(テロ)

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「こ、この度は、大変申し訳ありませんでした!」 「金に手を出したみたいだね」 「済みません! ほんの出来心で!」 バサラは頭を下げる。 「私の監督不行き届きです!」 キノも頭を下げる。バサラは後悔している。〝キノさんに頭を下げさせて絞まったと〟 「まあ、落ち着きたまえ。最近、トラピストの使徒が不審な動きをしてるそうじゃないか」 「き、金の事ですか?」 バサラとキノは頭を上げる。 「共存するには増えすぎてしまったんだよ。トラピストの使徒は」 「と、言いますと?」 「金は母船の燃料になるかもしれない。帰ってくれたら、万々歳じゃないか、トラピスト1系列の惑星に」 「確かにそうですが」 「トラピストの使徒は、我々地球人に早めのシンギュラリティ、技術特異点をもたらしてくれた。今や火星や木星の衛星まで直接人間が探査出来る。しかし、しかしだ…………」 織田長官は何やら言葉に詰まってるようだ。 「約40光年もの距離を生物を絶やさずに移動する手段。それと、地球の公転軌道をずらした手段。どちらも、トラピストの使徒は教えてはくれない」 「人間の叡知が結集しても、あやふやな仮説を立てるのが精一杯ですからね」     
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