再交付

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

再交付

 免許証の再交付を受けに、運転免許試験場に行って来た。申請書や紛失の顛末書とかは試験場にあるし、写真もそこで撮ればいいから、少し汚れた感じの健康保険証と印鑑と財布だけ持って行った。  3,500円の出費はちょっと痛いが、自分の写真の付いた真新しい免許証を手にすると、何だか自分という人間も新しくなったような感じがして、不思議な感じがする。写真映りがあまりよくないが、どうせ昔からのことだから贅沢は言えない。とにかく無事に再交付を受けることが出来て良かった。丁度昼めしの時間になったので、試験場の食堂でカレーうどんを食べたら、結構うまかった。  午後も時間が空いてるので、電車で帰って来たついでに、駅のそばにある出張所に住民票を取りに行った。いずれパスポートとか取る時に必要になるだろうし、思い立ったら忘れないうちに取っておこうと思ったのだ。本人確認書類は免許証だけで発行してくれた。最近は本人確認のシステムも色々発達してはいるが、やはり現状では、免許証が一番便利だし、逆にこれが無いと色々不便な世の中だ。  無事住民票を取った後、帰宅がてらホームセンターをぶらぶらして、その後スーパーに寄って食料品と飲み物をいくつか買った。  独身者用の1DKに帰ってくる。いかにも古臭い感じのシリンダー錠は、見かけどおり中身も古びているらしく、鍵が引っかかって回りにくい。二、三回がちゃがちゃやってると開いた。何やらコツがあるのかもしれないが、良くわからない。まあ、部屋に入れないほどの事態は発生していないから、特に気にはしていない。どうしても不便を感じたら交換すればいい。  ドアを開けて荷物をおろして一息つく。必要最低限の家具調度しかない部屋は、いかにも殺風景だが、無趣味な自分としては、特に文句も無い。  ただ、ダイニングキッチンの床に長々と寝そべるこの死体だけは、どうしても邪魔だ……。  昨日殺したこの部屋の住人の死体だけは、自分で何とかしなければならない。人ひとり入れ替わるには、免許証の写真を入れ替えたぐらいでは駄目で、やはりそれなりの汗をかかなければならないということだな。さて、神聖なる労働の時間だ。ホームセンターで買ってきたばかりの道具類に活躍してもらおう。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!