1:この後一杯どうです

13/15
494人が本棚に入れています
本棚に追加
/215ページ
「そんな……私、この日のために……ダイエットもして、いい店何軒か調べてシミュレーションしてたのに……」 「もしかして」  俺はほぼほぼ確信の疑惑の目で興梠を睨む。「俺を食うつもりでわざと誘わせたな? ホテルに近いバー選んだのも計画だろ」 「もちろんそうです。ホイホイ乗ってきたのでザマァって思ってました。佐藤さんも私を狙っていたからなんですね」 「スムーズに運ぶはずだ。お前が美人なのも絡新婦だからだったのか。おい、本当はババアなんだろ。もういいから正体を現せ」  絡新婦は老婆が美女に化けるので有名である。吸血鬼界隈でも絡新婦はとんでもねえ女だから気をつけような、などとまことしやかに囁かれていたのに、むざむざ手を出してしまった。  ところが興梠は俺の言葉に憤慨した。「古い情報でドヤ顔はやめてください!」と白い頬をぷっ、と蒸気させる。「私たち絡新婦は究極のアンチエイジングに成功しました! いまはみんな若くて綺麗です!」 「みんな? ああそうか、蜘蛛は子沢山だからな。で、美しさの秘訣は?」 「もちろんイケメンをたくさん食べることです。イケメンを摂取すると細胞が喜びますので」  言ったあと、ふくれっ面のまま、そういうあなたこそ。と興梠は返した。 「日差しも十字架も嫌がらない。こんな吸血鬼アリですか?」 「弱点を克服するのは進化の仕方として当然のことだ。嫌がってないわけじゃないよ、死にはしないけど嫌いだし、苦手だ」
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!