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陽の当たる場所に長々といるとさすがに気分が悪くなる。朝日を浴びて自律神経が改善したりする人間と逆だ。十字架だって気味の悪い形をしている。あんなものを威張って胸の中心に飾る海藻男はアホじゃないのかと思う。しかも2006年くらいのデザインときている。
またしても興梠が黙ってしまったので、俺は空気を切り替えるつもりで、ぽんと軽く手を合わせた。
「じゃ、この件はなかったということで。明日も頑張ろう。撤収」
扉まで歩きかけると、背後から「嫌だ!」という興梠の声が響き、俺は再び光の速さでベッドの上に逆戻りしていた。腕がねばつく。糸だ。
「こら!」
「こうなったら吸血鬼でもいい! 佐藤さんを食ってやる!!」
「やめろ! おい変なとこ噛むなっ……離せよ!」
「大丈夫です全食いしませんから! ちょっとかじるだけだから!」
正気か。と俺は叫んだ。もちろんやろうと思えばお互いに食い合うことも可能だが、どういうわけか、バケモン同士はまったく美味しくない。興梠のやろうとしていることはただの意地っ張りだ。
「美味しくないから!」
「美味しくなくていい! 私の努力の時間を返して貰う!」
「ダイエットしたのはお前の勝手だろうに! なんで食う前に痩せるんだよ意味がわからん!」
「プラマイゼロにするためですよわからんのかああああ」
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