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「佐藤さん……申し訳ありませんが、私はゲテモノは食べない趣味でして……中には、ね。そういうのが好きな方も……ええ。魚のね、肝とか」
「なにに気遣ってんだ俺だって望んじゃいないぞ。きみとはこれからも一緒に仕事していくんだから、どうすれば許してもらえるのか考えているだけだ」
興梠の肩に手を置き、ぷつ、と膨れた頬を覗き込む。
「痛かっただろ、ごめんな」
もういいです。と、興梠は小さく言った。雪のように白い頬がわずかに色を変える。横を向き、視線だけが俺に向いた。
「…………ところで佐藤さん」
「ん?」
「私の血……美味しかったですか?」
「ああ、いや全然。クッソ不味かったよさすが妖怪だな」
途端に興梠の髪が逆立った。ぼわっ、と音がしそうなほど膨れ上がり、真っ赤な瞳に大口を開け、威嚇する。
「最低です!!」
「だってそういうものだろ……俺たちは」
「レディへの気遣いが全然ない! これだから無差別レイパーの吸血鬼は嫌い! 寝込みを襲うチキン野郎め! そういうところは進化できなかったのね!?」
「なんだと言ったな!」
牙と、指の先端にも鋭い鉤爪を生やし、翼を広げた俺に負けじと興梠も距離をとった。姿勢を低くし、ねばついた口を開ける。
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