2:入学式

10/16
前へ
/215ページ
次へ
 くい、と中指で眼鏡を押し上げ、宮原は神経質そうに眉をひそめた。 「きちんと面接はしてくれましたか? 前期は問題児が多くて僕は大変に大変でしたが?」  前期の責任は北畠だ。そのクレームをいまここでつけられても困る。 「どんな風に問題児が多かったんですか」 「ええまずパソコンがなんなのかわかってない連中が多すぎますね。そのくせにお喋り。僕のありがたい話を聴けない奴はつまみ出す権利をください。卒業なんかさせませんので」 「うん、でも、そういう人に教える仕事だから……」 「心構えは必要なんじゃないですか? 一生懸命覚えようとするアクション? パッション? なんで授業中に飴食べるんですか? なんでスマホ弄ってるんですか?」 「あー、それは駄目だな。わかりました、1日目の授業が自己紹介なんで、そのときに釘を刺します」 「あんたそれ舐められてるだけよお」  自前のもみじ饅頭を食べながら花村が宮原のバリアを打ち破る。なっ、と宮原は鼻白み、いつもより素早く眼鏡を持ち上げた。「な、なんで僕が」 「あたしの授業のときはそんなことないもの。若いからね。もっと声出しなさい声を」 「なぜ僕が改めなければならないんだ! 改めるべきは間違ったことをしている生徒の方でしょうが!」 「舐められてるのは飴じゃなくて宮原くんか!」
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!

494人が本棚に入れています
本棚に追加