2:入学式

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 横田の冗談に宮原はなにか言いたそうにした。が、最終的に沈黙を選んだ。年の功の前に屈服したのだ。 「先生を舐めるような生徒は退学でいいですよ。はい、どうぞ」  興梠が差し出したお茶を、耳を赤くし、宮原は小さく頷くような仕草で受け取った。 「うし、今日も一日頑張るぞ」  ひとりの若者を凹ませたことなど微塵も気にかけず、横田は元気に伸び上がった。腕をぐるんぐるん回して職員室を出ていく。1時間目は社会保険だ。  北畠が選んだ最後の生徒たちが間もなく卒業する。途中で就職が決まって学校を去った者が数名。しかしほとんどの人間はまだ無職先行き不透明だった。  こんなことをしても意味があるのか。企業は即戦力が欲しいのだから、初心者を育てようなんて優しい場所は存在しないのではないか。チラシに謳う”初心者大歓迎”の文字は大きな嘘だと言ってもいい。  自信をつけさせなければならない立場にも関わらず、時折考えてしまうことがあるのだ。 ☆☆☆  入学準備のために遅くまで残っていた俺と興梠は、今日も一緒に職員室を出た。どちらからともなくエレベーターではなく階段を使ってしまった。 「驚きました」俯く興梠がぽつりと口にする。  おそらく北畠のことだ。 「俺もだ」 「佐藤さんがゲイだったなんて」 「なっ……!?」 「北畠さんを噛みましたね?」 「なんでそうなるんだ!」  踊り場から上へ下へと俺の怒号が響く。レイパーの次はゲイときたか。
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