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海藻男が退室すると、入れ替わりに興梠が入ってきた。海藻男と同じように前期に面接を受け、採用され、職業訓練生として3ヶ月研修を受け、無事卒業をし、この職業訓練校の事務として就職した。歳は24歳と聞いている。肩より上の内巻きボブに、大きな垂れ目と小さな唇が可愛らしい。
「これで全部?」
「はい」
興梠の手には扉に貼りつけてあった”面接中につき入室禁止”のビラが握られている。
「最後が強烈だった」
「ああ、さっきの頭も髭も無精の人ですか」
興梠が回想するように扉を振り返る。俺は肩を落とした。
「職業訓練の面接だぞ。職業訓練ってことはだぞ、無職だろ。それをお金を貰いながらスキルアップできるかもしれない大事な面接じゃないか。しかも情報課は倍率が高いんだ。髭にサンダル破れたジーパンってどういうことだよ」
「サンダルでした? そこまでは見てなかったなあ」
無念そうに興梠は眉を困らせたが、爪が伸び切った汚らしい素足など見なくて良かったのだ。さらに俺には気に入らないことがある。
「だっさい十字架のTシャツなんか着てくるんじゃない!」
「そこなのー?」
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