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開始時間を見計らって俺と興梠と学長の三人も教室に入った。室内はしんと静まり返り、各々あらかじめ通知しておいた番号順に席に着いていた。お喋りでもしていればいいのに、いい歳をした生徒たちはいまさら無理に友だち100人作ろうとはしない。
俺たちの入室で室内は一層緊張感に包まれた。首を捻って入ってきた人物の顔を確認する者、まっすぐ前を向いている者、爪を弄って俯いている者。反応は様々だった。
俺も机の横を通ってホワイトボードの前に行く間に、生徒の顔ぶれをざっと確認する。真ん中のあたりに座っている黄色いシャツを着た出っ歯の男、ふくよかな年配の女性、ガタイのいい中年男、眼鏡をかけた大人しそうな女性、ギャルっぽい女────などが特に最初に記憶に入る。特に最後尾の美女とは目が合った。
美味しそう。
興梠と学長は一旦壁際に立ち、俺だけが正面に立つ。
視線が一気に集まった。美女から目を逸らし、なるべく印象に残らない者の顔を中心に見ながら、口を開いた。
「おはようございます」
まばらに挨拶が返ってくる。こんな態度でこの先面接が通るかと不安になった。あとで指導する。
「えー、それではいまからマイスター教育センター主催、職業訓練事務科入校式を始めます。私はここの主任の佐藤です。よろしくお願いします」
またまばらな返事。さっきより小さい。
「皆さんはまず当校の面接という第一段階を越えてこられた方々です。これは大きな一歩です。皆さんには、この3ヶ月間の訓練で」
机の端に手を置き、俺は体をやや前へ倒した。
「進化を遂げて貰いたい」
《入学式・終》
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