第三章 すれ違いと不穏な噂。

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「リディア様のご帰国についてお話がございます」  どくん、と鼓動が大きく跳ねる。   ーー帰国。  わたしが雇われたのは期間限定のこと。  3ヶ月。  それが最初からの契約。  すでに2ヶ月と少し過ぎていて、その話が出るのはむしろ当然の話。  逆にわたしの方から確認しておくべきことだ。 ……なのに。  わたしは何を、 ーー何をショックを受けているの?  自分でもそんなことを考えてしまうほど、心臓は早鐘を打ち動揺のためか指先が冷たくなっていくのがわかる。 リルと交わした契約だから、リルの口から話が出るものと無意識に思い込んででもいたのか。  だから、カルダさんから告げられるということにショックを受けているのか。    それともここにいられるのが、後わずかだと改めて認識して、ショックを受けているのか。 ーーバカみたい……。  万が一、リルから契約の延期を申し込まれたとしてもけして受ける気はないクセに。  自分の愚かさに吐き気がした。
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