第三章 すれ違いと不穏な噂。

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 聞き違いだと思った。  動揺していたから、だから聞き違えたのだと。  なのに。 「……え?」  と、顔を上げて見たカルダさんの表情で、わかってしまった。  言いにくいことを告げたという顔。  そんな、表情をしていたから。 「どうしてですか?」  わたしが我が儘ばかりだから?  わたしが仕事らしい仕事もしない、お荷物だから?  わたしがリルに迷惑ばかりをかけてしまっているから?  わたしが倒れたりしたから?  それとも、それとも、それとも? 「三日後の船がご用意出来ました。予定より少し早いですが、そちらでご帰国下さいとのことです」   ーーフランシスカに着いた後も従者と馬車を用意しますのでどうぞ自国までお戻りになって下さい。  カルダさんの告げた要件は、そういうものだった。  何故?  どうしてこのことを告げるのがリルじゃないの?  頭の中を様々な疑問がグルグルと回っていたから、わたしはその後に続けられた言葉のほとんどを聞いていない。
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