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ただ一ついつもと違っていて。
わたしはそっと右手を曲げて指先で自分の耳朶に触れた。
指の腹に触れる硬い金属の感触。
今日のわたしの右耳朶には、獣人の人たちが獣耳に付けるのとよく似た耳環がはまっている。
昨夜。
頭の中はグルグルのグチャグチャで、とてもベッドに入っても寝付けそうにないと思うのに、案外アッサリとわたしは眠りの淵に入っていた。
人の気配に目が覚めたのは深夜をすっかり回ってからのこと。
明け方近い時間だっただろう。
誰かがすぐ傍らに腰を下ろしていた。
最初は誰なのかわからなくて、ドキドキと不安と恐怖を押し殺しながら寝たふりをした。
誰なのか、どういった目的なのかわからない以上、迂闊に動いて刺激するよりはひとまず寝たふりで相手の出方を伺うつもりで。
けれどすぐに相手が誰なのかわかってしまった。
そっと寝たふりで目を瞑るわたしの頬から、垂れた髪を払った長い指。
その指の感触だけでわかってしまった。
ーーリルだ。
リルがいる。
すぐ傍ら、手を伸ばせば届くすぐ近くに。
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