第三章 すれ違いと不穏な噂。

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「……ひどいよ、リル」  わたしはポツリと小さな小さな声で呟いて、寝返りを打つふりでリルに背中を向けた。  背中ごしに、リルが息を飲んだ気配がする。  わたしはというと全力で寝たふりをする。  ドキドキ。  自分の心臓の音が煩い。  しばらく、わたしも、わたしを見下ろすリルもお互いにお互いを伺っているみたいだった。  さら、とリルの指がわたしの髪をすく。 「あなたも」  リル? 「……あなたも約束を忘れていたでしょう?」   約束?  わたしは内心で首を傾げた。  覚えがない。  わたしは、『リル』と何か約束をしていた?  リルの指がわたしの耳朶のあたりでゴソゴソと動く。少しだけこしょばくて、わたしは必死にそれを我慢する。  やがてリルの指が離れたそこには何か硬いものが付けられたらしい感触があった。
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