恋とはちがう

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 この喫茶店は、日替わりで様々なコーヒーの種類を出してくれる。  おかげで、雅志のような客は悩まずに注文することができる。  そればかり注文しても、毎日違うのだから変な客とは思われない。  ただの「コーヒー好き」だと思ってもらえるだろう。  コーヒーの種類が変わっても、雅志には違いがよくわからなかった。  もともと甘党で、砂糖もミルクも結構入れるほうだ。  コーヒーそれぞれの風味や深みなんて、まるでわからない。  この先の人生、マンデリンとか、コロンビアとか、名前は記憶に残っても味までは思いだせない自信があった。  コーヒーのことなんて、雅志にはどうでもよかった。  喫茶店に通う目的は他にあったからだ。
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