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そのときの私は、さけんでしまいました。
私、新しい法則を発見したの、と。
その私のさけびに対して、返事の声が聞こえてきます。
ユリーカ、なんだって。
いつものようにわざとらしくも、やさしい口調で応えたのは、サモスのおちついたひびきでした。
みんな、むずかしいことばかり考えて、かんたんなことをわすれていたんだわ、と私が言葉を発するのに対して、アルクはいかにも興味がありますよ、というようにこくこくとうなずくのでした。
ねえ、ちゃんと聞いているの、と私はそのとき、背の高い青年のうでをつかみながら言いました。
私は毎日のようにアルクとやりとりをし慣れているので、こんなふうにアルクがうで組みしながらこくこくとうなずだけのときは、まじめに聞く気のない合図だというのを知っていたのでした。
うん、もちろんしっかり聞いていたよ、で、Pがなんだって。
私は、空返事をするアルクの耳に向かって、赤くなったふくれっ面をあびせながら、舌ったらずの声でこうさけびました。
だ、か、ら、新しい法則を発見したって言ったのよ。
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