ホシ

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何処かで見た事がある陽に焼けた顔が デコトラの窓から声をかけて来た。 唖然としている俺を置いて、 上村はまるで当然のように 助手席に乗り込む。 慌てて俺も後ろに続いた。 トラックの前面には 『度胸一番』とか『はぐれ鳥』とか 運転席の上部には『一番星』とか…… 銀色のプレートに書かれている。 その更に上には 金色の前たてが燦然と光輝く。 そのド派手さは、 さながらリオのカーニバル……。 乗せていただいておいて言うのも ナンだけど……コレで行くのか? そのカミムラへ。 運転席に乗り込むと、 星模様が入ったセーターに腹巻をした 喧嘩早そうなシブめのオッサンが 早速運転席から自己紹介をした。 「俺の名前は星桃次郎(ほしももじろう)。 そしてコイツは一番星号。 ニイちゃん達何処まで行くんだ?」 人懐こい笑顔でハンドルを撫でている。 「僕は上村。故郷S県のカミムラ目指して 二人旅をしてる。桃さん行けるかい?」 桃さんって…… 初対面なのに馴れ馴れしいぞ。 上村、ちょっとは遠慮しろよ。 「あったぼうよぅ。 野を超え、山越え、海超えて 日本列島御用達 。夢と希望の満艦飾。 高速道路を韋駄天走り。 積荷は大事な特急便だ」 豪快に笑いながら 桃さんは得意気に胸を張る。 パッと見たところ運転席に カーナビが取り付けられている様子も無い。 本当に大丈夫なんだろうか……。
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