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だから部屋を尋常じゃないくらい暑くして抗議したのだ。私の名前と同じ名前のお花に嫌がらせをする事で、遠回しに私に対して抗議している。
室温を冷却設定にしなかったのは、多分、寒いと部屋に帰って来た私が風邪を引いてしまうからなんじゃないかと。
拗ねてる癖に、可愛んだから……この優竜!
とか、内心身悶えしたくなるが今はそれどころじゃない。
チョコレート溶けちゃう!!
「もう!」
私は大急ぎで空調をオフにすると、ズカズカと窓辺に寄り、大きく開け放つ。熱せられた空気は開け放たれた窓に吸い込まれる様にして外へと流れていく。
「ルーちゃん!めっ、ですよ!」
「ふん、俺は悪くねえ」
拗ねたルーちゃんはぷいっとそっぽを向く。
ほんと、仕方のない人だ。
でも私がほんの少し離れただけでここまで全力で「俺は寂しい」「少しは分かれ」とストレートにアピールしてくる彼に対して、愛しさがないと言えば嘘になる。
「全く……ほんと、ちっとも変わらないんだから」
「人間だって瞬きする間に変わるって訳でもねえだろ」
「そうですけど」
ああ言えばこう言う。
口が減らないのも相変わらず。
でも許します。
だって、私は彼が大好きなんだもの。
好きな人にここまでされて嬉しくないという女の子がいるならお目に掛かりたい。
「ルーちゃん」
「あ?」
ぽん、とソファを叩く。
こっちに来て、と。
「……何だってんだ、全く」
渋々と身を起こすと彼は私の隣に腰掛ける。それから紅い双眸を不思議そうに細めてこちらを見た。
ルーちゃんお気に入りのベッドで渡しても良かったのだが、ソファを選んだのには理由がある。
ここは……このソファは、現界して暫くの間、いつもいつも寝そべっていた彼の1番最初のお気に入りの場所だったからだ。
私のお願い事を聞くのも、危なっかしい私を見守るのも、最初は全部ここからしていた。
私とルーちゃんの日常が始まった場所。
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