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彼が座ると私は後ろ手に隠していたチョコレートを、どの言葉と共に渡すかで思い悩んだ。
好きです!
↑違うなぁ。言ったら即座に「知ってる」と返されそう
いつもありがとう!
↑これだと「礼を言うのは今日だけか?」とお小言貰いそう
なら……愛しています、とか?
「!!!」
考えるとボッと顔に火が登った。
いや、もう既にそういう間柄ではあるし、愛してはいるけれど、でも、改めていざ言葉にするとなると……何か恥ずかしい。
「おい、呼んどいて百面相か?」
「あ!」
1人でモゴモゴしていると、彼は溜息混じりにほんの僅かに眉を顰める。そして
「ぁん?」
すぐさまスンスンと鼻を鳴らし始める。
あ、まずい
もしかしてこれ、匂いで気付かれた?
思ったのも束の間。
彼は鼻先を私に寄せて来るとスンスンと匂いを確かめながら
「チョコレート……?」
「うあ、ルーちゃん!ストップ!スンスンしないで!」
「お前……俺をほっぽって、小娘と菓子食ってやがったのか!」
超絶不機嫌顔。
自分だけ仲間はずれなのが大層ご不満だったらしい。しかも、大好物のチョコレートの匂いがするとなれば、彼がヘソを曲げるのも当然で。
「くそ、ムカつく……俺が何したってんだ」
舌打ちされる。
こんなの罰ゲームだと思っているらしい。
うーん
これ、もう素直に渡しちゃった方がいいかも?
何を言うか決めてはいないけど、未だにそこまで頭は回らないけれど……これ以上彼を不機嫌にさせるのも可哀想だ。
「あ、あのね、ルーちゃん」
「……なんだよ」
最早隠さぬ、不機嫌さ五割増。そんな彼に私はおずおずと後ろに隠していたチョコレートの包みを差し出した。
「あの、これ……」
「あ?」
突如差し出されたそれに、彼は一瞬怪訝そうに眉を寄せたが鼻を近付け匂いを確かめると、軽く目を見開き
「チョコレート」
ギュッと瞳孔が収縮する。
尻尾が左右にフリフリと揺れ始める。
わかり易く
それはもう、喜んでいる。
「俺にか?」
「はい」
頷くと彼はそれを受け取り、いつもならすぐさま包みをバリバリと乱暴に破いて中身を口の中へと流し込むのだが……何故かしげしげと、物珍しそうに眺めて首を傾げた。
「どうしました?」
尋ねると彼は首を傾げたまま
「何か、いつもと違うな」
「はい?」
包みを眺めながら彼は零した。
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