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「違うって、何処が?」
「あ?……あー、なんつーか、不格好じゃねえか?これ」
「ぐっ!?」
正しい指摘に思わず詰まる。
そりゃそうだ。
だってラッピングしたのは私だし。
パティスリーの高級菓子とはまるで違う。
しかし、ストレートに言われると……
何か……何かです
「雑な包装だな。初めて見たぞ、こんな不格好なモン」
「ぅぐっ!?」
「まあ、中身はチョコレートっぽいが」
「そ、それは……ま、間違いないかと!」
「ふぅん?……あ」
「ど、どうしました!?」
「あぁ、いや。なんつーか、これ、この包装紙ってやつか?何か、お前と似た匂いすんなーと思ったら……これ、ファウリア使ってんのか」
「き、気付きました!?」
そう!そうなのだ!
彼が気づくかどうかは疑問だったが、この包装紙にはお部屋に活けていてくたびれた後のファウリアを再利用している。
紙漉きという特殊な技術を持った職人さんに予め依頼して、ファウリアの花弁から取ったエッセンスと花弁を紙に入れて貰ったのだ。
……いいじゃないですか
貴族の道楽です。
分かってますよ。
でも、お部屋のファウリアたちは毎日、私と彼の日常を見ていた訳で……ただ捨ててしまうのも勿体無いし……お菓子作りのスキルが無い分、こうした細かな所で気を遣いたかったんです。
淡いブルーの手漉きならではの温かさがある包装紙。それに彼が気付いてくれて、私は少しほっとした。
「気に入りました?」
「ああ、悪くねえ」
尋ねると彼は素直に頷いた。
ご機嫌も既に戻っているのか、尻尾がユラユラと気持ち良さそうに揺れている。
「勿体無えな。お前開けろ」
「はい!?」
「俺だと加減間違って破いちまうだろ?だからお前がやれ。で、綺麗に開けたらそれ寄越せ」
「は、はあ」
全部命令形ではあるものの、どうやら彼なりに私が渡したこれが特別な贈り物だとは感じたらしい。
ルーちゃんは細かい作業が余り得意ではない。だから私に開けろ、と言って来たのだが……
こ、これ、何の羞恥プレイですか!?
彼への愛の贈り物を、まさか自分で開ける羽目になるとは!
見上げると彼は早く中身が食べたいのか、忙しく尻尾の先を小刻みに振って急かしている。
なんか、可愛い
「しょうがないなぁ……はい、どうぞ」
とは言ったものの、自然と頬が緩む。
丁寧に自分が包装したものを開けて、包み紙も畳んで彼に渡す。
「ん」
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