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Day story 1-③『ぷろじぇくと“C”』
【Scene:3『まい・すいーと・どらごん』】
「ルーちゃんルーちゃんルーちゃんルーちゃん!」
バターン
勢い良く彼の名前を連呼しながら部屋へと駆け込む。
物音に驚いた彼は、私が言った「お昼寝して待ってて下さい」を律儀に実行していたのか(と言っても休みの日は放っておくとずっと寝床でゴロゴロしてるか日向ぼっこをしているけれど)ベッドで怠そうに寝転がっていたが、私が飛び込んで来ると、一瞬ビクリとして何事かと目を丸くした。
「ソラ?!……どうした、何かあったのか?」
「ルーちゃん、あのねあのね!ってーーあっつ!?」
はしゃぎながら彼に近づこうとして、私はその前に大声で叫んだ。
何これ、暑っ!
部屋ん中、超あっつ!
何事!?
「あん?」
鋭い目を僅かに細める彼。
いつもと変わらない様子だが、私はそれどころじゃなかった。
部屋の中が、真夏の様に暑い。花瓶に活けたファウリア(私の名前の由来になった花)がくったりしてしまう程の暑さだ。
「何故に真冬にサマーバケーション!?」
「……何か良く分からんが、落ち着け」
「無理です!て言うかホント何事ですか!?お花がぐったりしてるじゃないですか、可哀想に!」
「変化に耐えきれなかったか。虚弱体質だな」
「切り花に過酷な気温適応求めない!て言うか、これでピンシャンしてたらモンスターフラワーですよ!?」
「いっそそれくらい頑丈になれ。いつでも快適空間が提供されると思うな」
「何そのスパルタ育成!?切り花にも手厳しい!?」
「俺は悪くねえ。適応できないファウリアが悪い」
「お花の話ですよね!?何か自分の事言われてるみたいでやなんですけど!」
「知るか」
事実、この暑さは異常である。
良く見ると空調魔導設備がフル稼働している。
うーん……何故?
ルーちゃん、寒かったとか?
確かに竜種は気温の変化に敏感だが、彼に関して言えばそうした事で体調を崩す様な存在ではないし、何より気温の変化は感じても、それに適応出来るだけの能力があるーーでは、何故こんなに部屋を暑くしているのか?
「あ」
ぽんと手を打つ。私は思い至った。
これはーー多分、私に対する嫌がらせというか、アピールなんじゃないかと。
俺を置いてくなんて、何事だ
と。彼はそう言いたかったのかもしれない。
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