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第2話 カースド・プランセス
任務は上々。
別件を終え、報告書を上司に提出してきた。日が沈む前に仕事を切り上げることができた俺は、柄にもなく勤務中に寄り道をして買った、大きめの箱をわき腹に抱えてさっさと帰宅した。
ボロ家の重厚な扉を大胆に開き、ホール先にあるボロボロの柱に背をもたれながら、庭の美しい光景を眺めているお姫様に声を掛けた。それに対して素直に振り向くも、俺をねめつけながらつっけんどんに「何かしら」と答えてくる。愛想の悪さは相変わらずだ。
俺の上着にべっとりと貼りついた返り血を見て、メルセデスがクスッと嘲笑し、目を細めた。
「派手にヤッたようね。血が甚だしいわ」
それに対しては特に反応せず、血で汚れたコートを脱ぎながら、メルセデスに箱を差し出した。
「土産だ」
「なあに? 生首?」
せせら笑いを浮かべて冗談めいたことを言うメルセデスは箱を受け取ろうとせず、代わりに俺がその蓋を開けた。
中から姿を現したのは、メルセデスの瞳のような――真っ赤な靴。
メルセデスは少し驚いたように、目を見開いた。息を殺してしまうほど、彼女は我が目を疑っているようだ。
「お前、ずっと裸足だったろ」
いつからかは、知らないが。
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