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第1話 ダーク・プランセス
がやがやと騒き立つ観客。各地の億万長者たちが掻き集められ、本日開催された“裏オークション”。このオークションにはいくつかルールがあり、最も重要なのは、観客は全員“仮面”を付けて参加しなければならない。闇社会に身を置く連中だ。素性を隠す必要がある。
仮面デザインは自由だ。ほとんどが舞踏会で使用するような奇抜で絢爛なマスクを身に付けてくるが、中には着ぐるみを被ってくる者もいるし、布を扱う者もいる。ちなみに俺は無難に、市販でもよく見かける真っ白な安っぽい面で顔を覆っている。
今晩も満席だ。ただひとつ、いつもと異なるのは、連中はやけに盛り上がっている。年に一度催されるこの「人売オークション」で、これほど騒々しくなるのは何年ぶりだろうか。
何やら“大物”が届いているらしい。
オークションに対してインタレストは一切無いが、仕事関係で毎年、顔を出している。このイベントで出展される商品を見学することで、微々たる情報を入手できる。出展物の歴史や性質などを頼りに、買い手の嗜好や人格、素性や意図なども見出せることがある。
俺の仕事は殺し屋。今回も俺に課せられた任務は“暗殺”。
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