『氷筍姫の後悔』①

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 風にそよぐ木漏れ陽が、輪をまった三人を心地よく照らしている。 「ふふん。教えてほしいかや?」  少女は鼻を鳴らし、自慢げに腕組みをして二人を見下ろす。その立ち振る舞いは、まだ年端もいかない少女にしては、いたって横柄である。しかしそれが何故か堂に入っている。 「知らぬことは罪じゃのう。仕方あるまい、物を知らぬおぬしらに、特別に教えてしんぜよう」 「つららのはなし、いつもむつかしくて、わからないからべつにいいよ」 「なぬ?」  つらら。そう呼ばれた少女は、彼の返事にかくんと口を開く。 「それよりもあんた、はやく花さがしなさいよ。えらそうな口ばっかりで、つかえないんだから」 「なぬぬ!?」  二人にあしらわれ、地団太を踏むつらら。そして激昂のまま、少女を見やる。 「使えないとは、どの口が申すと! 次にこのわらわの英知を馬鹿にするとあらば、女子供とて容赦せぬぞ!」 「やってみなさいよ、あーつかえないつかええない。だいたい、だれのせいで花をさがすだけでこんなにかかってると思ってるの?」  今にも噛みつきそうな剣幕のつららに、負けじともう一人の少女も声を張り上げる。 「この森のことはじゅくちしてるとか言って、やぶの中でまいごになりそうになったのは、どこのつららかしらね?」     
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