『氷筍姫の後悔』①

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「そ……それは、以前と少し感覚が違っただけで……」 「ほーら、つかえない。いいわけみたいに、こうかい? なんてことばつかいだして」 「ぐぬーっ、いろは! き、貴様っ、もう容赦せぬ!」 「やるっての? そのかお、どろだらけにしてやるわ!」  いろは、と呼ばれた少女は、花の束を投げ出し、代わりに近くにあった泥を手に睨みつける。一触即発の気配に、慌てて少年は仲裁に入る。 「ちょっとふたりとも、け、けんかしないで」 「なによ、口だしするき!?」「うるさい、あっちで花でも摘んでおれ!」 「ひいぃ……」  二人に睨まれ、青くなってへたり込む少年。瞳の端には涙が滲んでいた。  一見すれば森の木陰で戯れる三人の童。  へたり込む少年は、武芸者として名を馳せた父を持つ、決して貧しくはない家のせがれ。  花の冠の代わりに泥を構えるのは、村の地主の一人娘、いろは。  そしてもう一人。  そんな二人の童衣も霞んでしまう、薄桃色の絹衣を着た少女は――。  括っていても、一本一本がそよ風にもなびくような黒髪。  肌は、毎日外で遊び日に焼ける二人と異なる、雪氷の如き白。  時折世間知らずな事をしては、指摘されて鬼灯のように頬をむくれさせた。     
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