『氷筍姫の後悔』①

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 何より、二人にはない知識を披露し、名城の姫のように振る舞う仕草は、やはりどこか浮世離れしていた。  それが彼の少女、つららである。  ――以前、少年と少女が村の近くの森で遊んでいた時、どこからともなく現れ、二人の遊びに混ざるようになっていた。 「ふん。あのね、そうやっていつまでもめそめそして。あんたほんとうに、おさむらいさまのうちのなの?」  いろはは、つららの動向に警戒しながらも、呆れ声で彼を蔑む。 「ち、ちちうえはぼくのちちうえだよ、ほんとだよ」  村に住む少年の父親は、名のある武芸者であった。特に物の怪退治とあらば、都でも右に出るものはいないほどと称され、村人の信頼も厚い。 「それならもっとおさむらいさまらしくしたら? もうすぐ『ぶけぼーこー』で、とおいおしろに行くんでしょ? そこでやってけるの?」 「こわいことは、あんまり、やりたくないな……」  なんとも情けない顔で笑う少年に、いろはは大きくため息をつく。 「あきれた。せっかく『かどで』をいわって、お花のわっかつくってあげてたのに」 「えっ! くれるの?」  ハッと顔を上げる少年だったが、その眦からほろりと残りの涙が垂れる。いろはは、胸に湧いた思いのたけを込めて、めいいっぱい怒鳴りつけた。     
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