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「すぐ泣くひよわなおとこにあげるわけないでしょ! まったくもう!」
「ほほう……」
すると二人のやり取りを見ていたつららが、ほくそ笑みながら言う。
「ならば、わらわが代わりにそやつに花輪をくれてやろうぞ」
「――なっ」
唖然とするいろはを押しのけ、つららは座り込む少年にすり寄る。
「どこぞの猪の如き乱暴娘には期待せんでも、わらわが特別なものをこしらえてしんぜよう」
「とくべつ!? わーい、ありがとう、つらら!」
花が咲いたように目を輝かせて笑う少年。
「そのかわり、お主はわらわのものじゃ。身も心も、わらわに尽くすのじゃぞ?」
「うーん……、よくわからないけど、いいよ。ぼくつららのものにな、」
「――るんじゃないわよ、この、おばかっ!」
木々にとまっていた鳥たちが驚いて飛び立つほどの大声で怒鳴り、いろはは泥だらけの手で彼の頭をひっぱたいた。
「なにかってにへんなやくそくしてるのよ! そーゆーのよくないんだからっ!」
少女の声が聞こえているのかいないのか、叩かれて草むらに埋もれた少年からはしくしくと泣き声しか聞こえてこない。
「おやおや、これまた淑やかさのかけらもないのう」
そこへつららが横槍を入れる。
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