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「花輪の代わりに泥を被せる娘が『あげぬ』と申すから、わらわが代わってくれようというのに、何を怒っておる?」
「うっさいわ。あ、あげないなんて言ってないんだから!」
「……ぐす、言ったよぉ……ひぃっ!」
涙と土で汚れた顔を上げ抗議した少年だったが、いろはに睨まれすぐに顔を伏せてしまった。
「ほっほっほ、怖いのう。どうじゃ、わらわのものになる気になった? わらわなら殴りもせぬし怒鳴りもせぬぞ」
「う、うん……ぼく、つららのほうが」
「だめー!! ぜったいだめなんだからーっ!!」
そう怒鳴って遮ろうとする少女をおしのけ、つららは少年を助け起こす。
「ふん、邪魔立てする道理など、確かに『あげぬ』と申したお主にはなかろう」
彼の着物についた土を払いながら、いろはへにやりとした目を向ける。
「――あの時素直に『あげる』と、こう言っておけばよかった。お主、今そう思っておるじゃろう?」
「ぐっ!」
図星なのか、悔しそうに唇を噛むいろは。
「そう思う無念の情。が、後悔じゃ。その身をもって体感したかや?」
「うう……」
したり顔のつららに、はめられた事に気づいた少女は顔を真っ赤にする。
「これに懲りたらもう少し、しとやかさをもってわらわと張り合うが――」
「うがーっ!」
「――よいぞ、ぶっ!?」
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