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「こっ、げほっ、こちらです。今日、しょ、、紹介のアパルトメント白井です。」
私は坂道の終盤あたりで顔を上げた。すると、そこにはレトロな洋館風の建物があった。
それは想像していたアパートとは大分違っていた。
私が今まで見て来た、アパートはトタン屋根の木造建てがほとんどだった。こんなコンクリートのアパートを見たのは初めてだ。
「外観も素敵ですよね。」
不動産屋が言うと、私はうんうんと頷いた。
小さい頃から、西洋の建物を見るのが好きで、いつかは住んでみたいと思っていたが、まさかこんなに早く夢が叶うとは思わなかった。
「本日紹介するのは305号室です。」
そう言いながら不動産屋は建物内にある階段を上って行く。私も後に続いた。
建物の外に剥き出しになっている階段ではなく、内側にある階段もお洒落だ。
「こちらですよ。」
言われて、中を見た瞬間に決めた。
西洋風な部屋には似合いの西洋風の家具が備えられてある。夢で見たような部屋だ。
私はその日の内に契約書を書いた。
実家以外の家で初めて住むのがこんな素敵な所だなんて、早く引っ越しをしたい、と思っていた時に、あの坂道を思い出した。
あの駅からの坂道。
毎日登るであろう坂道。
私は不動産屋と別れる前にもう一度聞いた。
「駅までの道はあの坂道だけですか?」
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