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影が喋った。良く見ると、背の高い男性だった。
「あんた、新しい人?こっちは疲れてるんだから、ちょっと退いてくれない?」
男性はそう言うと、無理矢理、私の横を通って、アパルトメント白井の廊下をスタスタと歩いて行った。どうやら1階の住人のようだ。
びっくりしたのと失礼な男だった事で、私の坂道疲労はもうピークだ。
私は部屋に入ると直ぐにスマホを取り出して、地図アプリを開いた。もう何度か試したことだったが、検索した。
アパルトメント白井から最寄りの駅までの経路。結果は前回と同じで、あの坂道が一番近い道だった。他の経路は回り道の上に更に坂があるという酷いものだった。
はあ、とため息を出すと、勢いで指がスマホの画面に触れた。どうやら、もう一度検索を押してしまったらしい。
すると、さっきとは別のルートが出た。
一番近い経路として、あの坂道ではなく、坂道沿いにある公園の脇道のような所が表示されていた。
えっ!こんな所に道があったんだ。
坂道沿いの公園は駅の側にありながら、複雑な地形からなのか、道は公園の下側にある駅には繋がっていなかった。それは引っ越しする前に確認した。もしかしたら、公園からいけるのでは?と、思っていたからだ。
でも、こんな脇道気がつかなかった。
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