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人一人しか通れない階段道を駆け足で下りて行く。 木々の匂いも気持ち良い。 きっと、ここはマイナスイオンで溢れているだろう。 一人夢心地に浸っていると、声が聞こえた。 「クスクス」 笑い声だ。 階段の上は公園だ。 子供が朝から遊んでいるのかな? そんなことを気にしてる場合じゃない。 私は自分が遅刻していることを思い出した。 階段を急いで下りていく。 だけど、いつもより遅く出たのに早く駅に着いた。 やっぱりあの階段は近いなあ。 会社へ行くと、一日中勉強の嵐だった。 新入社員とはこんなにも覚えることが多いのかと… いつになったら一人前になるのやら。 私はヘトヘトになりながら、会社を出た。 幸い、アパルトメント白井は会社から3つ目の駅にある。実家からの通勤時間とは雲泥の差だ。 電車を降りると、駅の隣にある小さなコンビニで晩ご飯を買った。 今日はハンバーグ弁当。 コンビニを出ると直ぐ横の脇道に入った。 階段は楽だ。 あと、10分もしない内に部屋に着いてる。 だけど、階段を見上げて、気が付いた。 街灯がない。 真っ暗だ。 私は少し躊躇したが、あの坂道を登る気にはならなかった。 スマホのライト機能をONにして、階段を上ることにした。 せめて他にも上る人がいればと思ったが、誰も見当たらない。 ライトを足下に向けながら進んでいく。 見えるのは2、3歩先までで、その先は闇だ。 すると、また笑い声が聞こえて来た。 クスクス クスクス 午後8時を過ぎているのに、まだ上の公園で子供が遊んでいるのか? 耳を澄ましたまま歩いていると、今度は足音が聞こえた。 背後から聞こえている。     
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