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「お姉ちゃんが欲しかったんですって」と、ママは言った。
私みたいなお姉ちゃんで残念だったろうなと思っていると、それを見通したのか、ママが言う。
「美湖、千夜みたいなお姉ちゃんができて嬉しいって、そう言ってたことがあるんだよ」
「ええ……? なんで?」
「千夜、あの子に意地悪はしなかったから。それだけの理由だけど、それがあの子にとって一番嬉しかったことなの。だからチョコをもらえて、すごく嬉しかったんだって」
「……ふうん」
あの子は、賢いけどちょっと馬鹿だ。私がしたことなんて、約一年も一緒にいて、本当にそれくらいで、むしろ冷たい態度を取り続けていた自覚があるくらいなのに、それだけで私みたいなお姉ちゃんでよかったなんて思えるなんて、びっくりするほど頭が悪い。
でも、一番頭が悪いのは私。……ママとパパと自分の輪っかにあの子が入ってきて、たったそれだけで、あの子のことを知ろうともせず嫌っていた、私自身だ。……そうされると、とてもつらいとわかっていたのに、小さな意地にしがみついて、ずっと変わらずにいたなんて、本当の本当に、馬鹿だ。
……輪っかの外に追い出されたんじゃない。私が勝手に飛び出していたんだ。
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