かぞくのわっか

16/17
前へ
/17ページ
次へ
「お姉ちゃんが欲しかったんですって」と、ママは言った。  私みたいなお姉ちゃんで残念だったろうなと思っていると、それを見通したのか、ママが言う。 「美湖、千夜(ちよ)みたいなお姉ちゃんができて嬉しいって、そう言ってたことがあるんだよ」 「ええ……? なんで?」 「千夜、あの子に意地悪はしなかったから。それだけの理由だけど、それがあの子にとって一番嬉しかったことなの。だからチョコをもらえて、すごく嬉しかったんだって」 「……ふうん」  あの子は、賢いけどちょっと馬鹿だ。私がしたことなんて、約一年も一緒にいて、本当にそれくらいで、むしろ冷たい態度を取り続けていた自覚があるくらいなのに、それだけで私みたいなお姉ちゃんでよかったなんて思えるなんて、びっくりするほど頭が悪い。  でも、一番頭が悪いのは私。……ママとパパと自分の輪っかにあの子が入ってきて、たったそれだけで、あの子のことを知ろうともせず嫌っていた、私自身だ。……そうされると、とてもつらいとわかっていたのに、小さな意地にしがみついて、ずっと変わらずにいたなんて、本当の本当に、馬鹿だ。  ……輪っかの外に追い出されたんじゃない。私が勝手に飛び出していたんだ。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加