かぞくのわっか

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 下の階から、耳をつんざくような泣き声が聞こえてくる。眠い目をこすりながら、枕元の時計を見ると、午前三時半。世の中だいたい、みんな寝ている時間。特に私みたいな小学生は、ぐっすりすやすや寝ていていいはずの時間なのに、今日もあの子に叩き起こされた。  あの子がきて、約一年。最初に比べたら夜泣きはずいぶん減ったけど、それでもときどきこうやって、あの子は泣き出す。あの子のことをよく知らない人が聞いたら、あれこれ想像されて通報されたっておかしくない、激しくって痛々しい泣き方だ。  あの子はどうしてあんなに泣くんだろう。何が気に入らないんだろう。……私のパパとママ、あの子につきっきり。二人ともそれが申し訳ないようで、しょっちゅう私に謝るけれど、それがまた、癪に障る。  謝るくらいなら、あの子のこと、もといたところに返してくればいいのに。今日の冷たい空気に負けないくらい冷たいことを、ついつい考えてしまう。  ……私だって、あの子がかわいそうな子であることはなんとなくわかっている。最初に来たときはひどい怪我をしていたし、パパとママと聞いた年齢と見た目はどうしても噛み合っているようには見えないし、何か事情があってうちに来たんだろう。他に行くところだって、きっとないんだ。  でも私は子供だから、そういう事情の詳しいことは教えてもらえていない。ただ、妹だよって、パパとママはそれだけしか言ってくれない。  この家の中には大きな輪っかと小さな輪っかがあって、私はその、小さな輪っかの中にたった一人にさせられている。  ……イライラして、うまく眠れない日が、最近、とても多い。
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